最近における試験研究成果の概要

農業部

(1)水稲、大豆の奨励品種決定調査
   水稲「どんとこい」は「コシヒカリ」よりやや晩生で短稈、倒伏に強く、極多収、食味がよく、平成7年認定品種に採用された。
 また、大豆「タママサリ」は「タマホマレ」よりやや早熟で晩播栽培で多収、高糖分で煮豆が軟らかく食味が良い。平成11年から認定品種に採用された。
(2)大豆優良品種の育成
   大豆「丹波白」は「丹波黒」と「タマホマレ」の自然交雑により生まれたものを昭和58年から育成した極大粒の白大豆で、軟らかく糖分が多いので、高級煮豆用として特産化が期待され、平成7年に種苗登録された。
   また「大豆兵系黒3号」は、篠山町在来種の中から選抜育成を行ったもので、晩生種で茎が太く、極大粒である。県内各地で試作し、評価は概ね高く産地ではこれに統一しようとする動きもある。
(3)地域特産物としての色大豆の品種選定と栽培法改善
   34品種を収集し、栽培上の生態的特性、色調の分布とその特徴、色差計による測定値と肉眼による外観との関係などを調査し、「水くぐり晩生」、「朝来青」などの有望品種を選定した。
(4)小豆優良品種の育成
   小豆「兵庫大納言」は、青垣町の在来種の中から選抜育成し、平成7年種苗登録された。晩生で多収、日本一の大粒で、粒形・色調が優れ、加工適性でも高い評価が得られている。
   また白小豆「白雪大納言」は、上記の「兵庫大納言」と「安富大粒白」の雑種集団から選抜したもので、在来系統「岡山白」より大粒(1.8倍)、多収(1.7倍)で、外観品質も優れている。現在、種苗登録申請中である。
(5)農業経営モデル実証試験(県北水稲大規模営農)
   1経営体10ha規模を想定した低コスト稲作経営の基幹技術として湛水直播、乳苗及び稚苗移植栽培技術を出石町室見台の大区画ほ場において実証した結果、発芽・苗立ち不良の問題は解消され、10a当たり収量はいずれも6O0kgと多収、同栽培労力も12〜14時間で省力化が図れることを実証した。
(6)重量野菜の機械化技術体系の確立
   越冬栽培キャベツを対象に、セル成型苗を用いた機械移植栽培法を中心とする省力・軽作業化技術体系の現地組立試験を行い、標高別の播種・移植適期の策定、追肥施用量と省力化等について越冬栽培技術を確立するとともに、移植機・乗用管理機及ぴ収穫物運搬車等を利用した一連の機械化作業の疲労度や筋力測定を行い機械導入による作業性の向上効果を明らかにした。
(7)ヤマノイモの優良系統「青波」の育成及び栽培法改善
   昭和58年より「アオヤマ」から分離して系統選抜を行ってきた結果、平成7年に既に青成された「秀丸」や「兵た系28号」に比べて収量、品質性に優れた「青波」を育成した。現在、当センター及ぴ篠山市で青波を増殖中である。
   また予め萌芽させた種いもの利用による増収技術や、ムカゴ由来の種いも利用による効率的増殖・栽培方法についても開発した。
(8)環境緑化植物による法面の有効利用技術の開発
   北部農技センターの法面に68種類のグラウンドカバ−プランツを植栽し、その生育特性の検討を行った結果、植栽後3〜4か月で被覆率10O%に達し、その上景観上も優れる種類としてアークトセカなど数種類を選定した。さらにセル成型苗や細断苗を利用した慣行ポット苗に代わる省力・低コストの植栽方法を明らかにした。
   またこれまで不可能とされてきたグラウンドカバープランツの機械施工を可能にする新しい緑化工法を開発した。セル成型苗、細断苗を動力(エアー)により培養土と混合後、法面等に吹き付ける方法である(特許出願中)。
(9)ナス科作物の難防除病害虫に対する天敵拮抗微生物利用技術の開発
   現地において、半促成栽培トマトを食害するオンシツコナジラミに対する天敵オンシツツヤコバチによる防除試験を実施した。年度によって多少発生時期に差が見られたが、天敵利用は薬剤散布に匹敵する効果が認められた。
   北部農技ほ場において、ピ一マン青枯病に抵抗性を持つ蛍光性シュ−ドモナス菌(S−38,S−66の2種)をピーマン種子に接種したところ、無処理株に比べてかなり高い抑制効果があり、実用化の可能性が認められた。
(10)密植栽培によるナシの早期成園化技術の確立
   老木ナシ園の改植や新植の阻害要因になっている更新時の減収の軽減及び剪定技術の平易化を図るための方法として、密植栽培による早期成園化技術を確立し、植栽6年目で慣行栽培の2倍に近い収量10a当たり6.6トンを達成した。この成果は農家や関係機関から注目されている。
(11)オウトウの低樹高栽培技術の確立
  「香夏錦」や「佐藤錦」は「高砂」より果実や糖度で優れ、県北部地域に適応性の高い品種である。整枝法では、Y字形は花束状短果枝の着生が多く、樹高2.5〜2.7mと低く仕立てられ、雨よけ施設による低樹高栽培に適している。
(12)蚕の抗菌タンパク質の生物的利用技術の開発
   蚕の5齢幼虫や蛹、天蚕の蛹の体液中に誘導される抗菌タンパク質は、野菜などの植物病原菌、とくに軟腐病菌に対して増殖抑制に有効であることが認められた。

 

畜産部

(1)新育種手法開発調査試験
   県内で肥育された但馬牛の枝肉成績をもとに、供用中の繁殖雌牛8,365頭の育種価を推定し、繁殖農家における計画交配の指標とした。また、育種価に基づき計画交配して生産された雄子牛を種雄候補牛として育成しているが、特に平成9年度以降は受精卵移植産子も導入して、後代に与える遺伝能力の検定を実施している。
(2)肉用繁殖経営における早期母子分離が子牛の発育・疾病並びに母牛の繁殖に及ぼす影響
   分娩後6日目に子牛を超早期分離し、母牛に維持養分量の飼料を給与することにより母牛の空胎期間は短縮でき、母牛の分娩間隔は3年連続して11か月となった。 また、子牛の離乳時期の決定は、人工乳を500g摂取するか体重が45kg程度に達した時点とすると子牛の発育を維持しつつ代用乳の給与期間が短縮できる。
(3)肉用繁殖牛のほ乳量推定技術
   分娩直後のほ乳行動の調査と分娩後4、8、12週時の1日当たりほ乳量、各週時の子牛の体重及び1日当たり増体量を測定してほ乳量と子牛の発育の関係を明らかにした。 4週齢時の1日当たりのほ乳量は、各週齢時の体重及び1日当たりの増体量との相関が比較的高かったことから、子牛の初期発育に大きな影響を及ぼすことが判り、子牛の体重等をもとにしたほ乳量推定式を作成した。

 

加工流通部

(1)中山間地域の特産品を用いた加工食品の開発
   中山間地域の特産品を原料に用い、付加価値の高い加工食品の開発を検討し、災害時の非常食としても、簡便かつ口当たりの良い加工品開発を行った。
   ヤマノイモ調味品のトロロは食味が良く需要が高いが、すり下ろし状態では日持ちが悪く、加熱殺菌は粘性が低下させる。植物体抗菌成分(ワサビ抽出物)と高圧処理を組み合わせて保存性の高いトロロ調味品を開発した。また、シロップ漬け缶詰のカットフルーツは、果実本来の甘味や風味が失われ、加熱殺菌による食感の低下や加熱臭を生じるが、加熱を伴わない高圧処理により原料素材の特性を生かしたカッ トフルーツ製品が可能なことを明らかにした。
(2)高冷地における米の品質
   県下には標高600m以上の水田が存在し、平地に比べ気温及び水温が低く、水稲の食味成分に影響する。このような立地条件の関宮町別宮(標高731m)で食味への影響を調査した。
   高冷地向け品種で順調に登熟した場合には、デンプン中のアミロース含量は平地に比べ比較的高い値を示したが、タンパク室含量が低いことから食味評価は良くなった。栽培技術上、水温が低くなる水口部ではタンパク質含量、アミロース含量がともに高くなり、食味評価が.低下するので、水温を高める流路(日寄せ)の設定などの対策が必要となる。
(3)山野草の草姿活用型食品の開発
     薄焼き煎餅に使用するでんぷん特性と配合割合を検討し、タピオカ、コーン、バレイショの基本配合割合を策定した。煎餅の表面を様々な野草、草花等の素材で飾ったり、野菜(ホウレンソウ、カボチャ)等を生地に混合することで地域素材を活かした加工法を開発した。
    朝来町やまびこ作業所(障害者施設)で商品化したのを始め、南光町のひまわり、三原町でも商品化の指導を行っている。
(4)育成した大豆、小豆等の特性解明と加工適性評価及び用途開発
   農業部と連携して、育成した「丹波白」大豆、在来の緑大豆及び兵庫大納言」小豆の特性解明と加工用途の適性評価を行った。
   「丹波白」大豆は、大粒性を生かした煮豆加工では裂皮率がやや高 いが、加圧蒸し大豆とした調理用素材びん詰やエダマメ利用では有望な製品が得られた。
   緑大豆は在来種10系統を外観や成分から 4グループに分類するとともに、緑大豆の特性が顕著に発揮できる系統として「朝来青」「長野青」「水くぐり」などを選定し豆腐加工に利用促進の道を拓いた。
   「兵庫大納言」小豆の新育成品種特性は種皮色が鮮明な赤色を呈し、その加工品の外観は腹切れしにくい大粒小豆であった。加工用途は、ゆで小豆、粒あん、甘納豆、クッキー、ケーキのいずれの加工品でも「兵庫大納言」の評価は高く、現在商品化が検討されている。
(5)近赤外分析装置を利用した非破壊迅速品質評価システムの開発
 食味の良い米は窒素(タンパク質)、アミロ−ス(直鎖デンプン)含量が低く、Mg/K含量比が高い。これら3成分を近赤外分析装置で迅速に判定し、食味を判別するソフト開発を行った。経済連但馬支所「土かおり米」生産振興事業(平成9〜11年度)で、良食味生産の施肥改善の目安や米の食味評価の審査基準の一つに採用されている。
 青果物については、果実の表面に近赤外線を当てるだけで糖含量を測定する方法をトマト、イチジク、ブドウ、ナシ、温州ミカンを用いて検討し、果実を傷つけることなく高い精度で糖度を測定することを可能にし、品質向上のための試験に役立てている。
    新規の活用法として、各地で生産している味噌の水分、食塩、全窒素を簡易に測定して品質管理に有効な測定方法を開発した。また、ホウレンソウはサラダに利用されることから、硝酸態窒素の低減が要望され、迅速に測定できる回転ドロワーを用いた測定法を開発した。
(6)但馬牛の肉質特性の解明と鶏肉加工品の開発
   但馬牛の精肉の理化学的分析およぴ官能評価を行った。牛肉の肉質評価は、遊離アミノ酸が低くジぺプチド割合が高く、オレイン酸/ステアリン酸比及び不飽和脂肪酸割合が高いと「風味」の評価の高いことが判明し、和牛肉はホルスタイン肉・輸入肉に比べ高い評価を得た。但馬牛1O検体の調査では、同じ肉質等級内でも差が見られたが、皮下脂肪のオレイン酸/ステアリン酸比と風味の評価は一致した.
  鶏肉(むね肉)の加工品としてジヤーキーを開発した。むね肉の保水力、肉汁率を高めるのに、糖類やCa製剤、ゲル化剤が有効であった。みそ漬けの味噌床は、衛生面と風味の点で2回まで使用可能であった。
(7)夏季ホウレンソウ、ブドウ(ピオーネ)の鮮度保持技術
   夏季ホウレンソウは、しおれが著しく但馬から阪神方面への出荷が困難であったが、慎行の包装資材を使って上部中央を5cm幅でシールする鮮度保持の包装法を開発した。この技術はおおや高原有機ホウレンソウに活用され、コープこうべのフードプラン野菜の出荷技術に採用され、店頭にならび実用化した。産地の有機栽培、連作回避、流通技術が評価され平成9年朝日農業賞受賞の一因となった。
 ブドウは大粒嗜好で無核ピオーネが産直を中心に伸びているが、暴軸が褐変するなど品質低下が早い問題がある。予冷施設の無い産地のために、早朝収穫した果実を防曇フイルムで包装し、発泡スチロール箱に詰め、出荷する方法を開発した。この方法では常温流通でも1週間の鮮度が保てることを明らかにした。
(8)機能性フイルム等温度管理を活用したカット野菜の高鮮保持流通技術の開発
   レーザー光等により微細孔処理した機能性フイルムと5℃低温の組み合わせでレタス、キャべツ、ハクサイのカット野菜の鮮度保持を検討した。カット野菜は刻みの程度に従い呼吸量が多くなり、1/2カット野菜ではレタスで2〜3日、キヤべツとハクサイで3〜4日が高鮮度状態を保ち、10000ml/u程度の比較的高い酸素透過量を持つ機能性フイルムが適していることを明らかにした。
(9)からし菜浅漬けの品質向上と加工法改善
   からし菜浅漬けは、「あざみ菜漬」 「かぐら漬」として地域食品に定着しつつある。原料野菜はあざみ菜、融水菜が使われるが、両種の特徴である辛味成分はアリルイソチオシアネート(AIT)で、あざみ菜は栽培時期による辛味成分の変動が少なく積雪冬期を除き安定した原料品質が得られる。一方、融水菜の夏季栽培品は辛味成分が強く、季節性の高い差別化製品が得られることを明らかにした。
 両種の漬物製品は、冷蔵保存による品質保持期間は辛味の減少と色調の悪化から2週間が限度である。冷凍保存では歯触りの低下があるものの、周年出荷が可能である。また、和田山町の「かぐら漬」は、平成9年3月ふるさと食品コンクール(東京、食品産業センター主催)の国産原料部門で会長賞を受賞した。
(10)生芋コンニャクの製造と機能性評価
   ふるさと食品として需要の多い生芋コンニャクを周年安定生産するため、加水量、凝固剤を検討した。
コンニャク製造の凝固剤は、アルカリ度(中和に要する酸量)が高いことが必要で、炭酸ナトリウムを多く配合しているものが適し、凝固剤中の炭酸ナトリウム含量の配合割合が硬さや官能評価に影響する。配合が少ないほど色調は淡く、軟らかく評価が低くなった。生芋コンニャク製造には、加水量3倍、炭酸ナトリウム0.5%添加(対生芋重量)、荒粉コンニャク製造には、加水量18倍、炭酸ナトリウム12%添加(対荒粉重量)が適当であることを明らかにした。生芋コンニャクとともに荒粉の原料保管を生かした周年加工の指導に活用する。
(11)地域色を生かしたワインの製造
   地域からの要望が強い特産物を利用したワインの試験醸造を行った。これまでに試醸した品目はイチゴ、クワの実、ヤマブドウ、プルーン、ブルーべリー、ナシである。イチゴは発酵過程で色素が失われ、天然系色素の添加が必要なこと、ヤマブドウは搾汁率が高く、酒質は酸味、渋味が強く飲み口は荒く、色調は濃くなるが、普通種とのブレンドで嗜好性を高める必要のあることを明らかにした.プルーンは琥珀色をした飲み口の良いワインができ、ブルーべリ一は用いる品種により色調に特徴のあるワインが製造できることを実証した。ナシは原料段階で果皮部分を除去すれぱ苦味を軽減した製品となることを明らかにし、現地企業に技術指導を行った。
(12)ブルーべリー・ユズを利用したゼリー菓子の開発
   製菓用ゼリー化剤に多くの資材が市販され、それらの資材を利用して県下では、桑の実などのゼリー菓子加工の取り組みがある。各種ゼリー化剤の諸性質やゼリー化の配合割合や適正な酸度条件等を明らかにし、地域加工食品の開発のため、ブルーべリーやユズのゼリー菓子製造法の開発を行った。平成8年度に市販を始めた神崎町のユズゼリー「風のしらべ」の開発・指導に役立てている。
(13)地域特産食品の開発と加工法の改善
   昭和60年に食品加工指導所を設立して以来、地域の加工食品づくりを技術面から支援してきた。生活改善グループ等が地域の生産物を原料に商品化した製品は、平成10年度実績で180加工グループ等が生産 を行い、品目数は504品目、年間販売額は51億3,573万円である。内訳は、漬物類1億9百万円、味噌類1億9千万円、佃煮類4億1千万円、菓子類5億7千万円、ジャム・ジュース類6千万円、餅類8千万円、乳製品類4億1千万円、ワイン・酒類8億8千万円、麺類1億円、ハム・ソーセー ジ類5億2百万円、その他(18億1,400万円)、合計51億3,573万円である。農協、魚協、第3セクター等の法人組織を除いた製品数は約330点、約6億円となっている。 食品・外食産業需要対応野菜産地育成事業(平成4〜)に対応し、淡路のタマネギ加工適性品種の選定による栽培収益向上、姫路のタケノコ加工品「若筍煮」の品質向上、黒田庄町のコロッケ、日高町の切り干しダイコン、和田山町の「かぐら漬」、青垣町・篠山町の「あざみ菜漬」等の特産品の定着に役立てている。 平成10年度全国優良ふるさと食品コンクールにおいて、加美町の「地どりめしの具」が国産原料利用部門で農林大臣賞を受賞した。
(14)技術指導・相談、研修・実習の実施
   食品加工施設の円滑な運営を図るための技術相談・指導、グループのリーダー、加工施設等の技術者育成のための研修・実習を実施している。平成10年度における技術相談指導は464件、技術研修会25回(参加人数736人)、講習会への講師出席12回、現地加工施設での指導20回、食品コンクール等の審査会への出席5回を行った。